
AliExpress で GOFATOO M.2 NVMe SSD 1TB を買ってみました。MINISFORUM のミニ PC に採用実績のあるブランドですが、販売ページには「7000MB/s」「TLC」とあるだけで、NAND とコントローラの素性は書かれていません。この記事では届いた個体のラベルを剥がして中身を確かめ、容量偽装の有無、ベンチマーク、省電力機能(ASPM)の対応状況を順に見ていきます。
購入価格:¥15,636(割引適用後) 購入時期:2026年9月
外観と基板:Maxio のリファレンス基板そのまま

2280 サイズの片面実装で、表面は青いラベルで覆われています。裏面の基板には MAP1602-DB-10-01 のシルク印刷があり、これはコントローラメーカー Maxio(聯芸科技)が用意している MAP1602 用リファレンス基板の型番です。裏面ラベルの型番は P220B-001TB、P/N は GFTOM29LMI15KCC00-001TB で、「NVMe 4.0」の表記があります。ブランド独自の設計ではなく、コントローラメーカーの設計をそのまま製品化した、格安 SSD ではよくある構成です。
中身の特定:SanDisk BiCS6(ツール識別)+ Mestor MS1015

まず Maxio 系コントローラ向けのフラッシュ ID ツール(maxio_nvme_fid)で読み出すと、NAND は全チャネルとも SanDisk 162L BiCS6 TLC(1024Gb/die・4Plane) と表示されました。BiCS6 はキオクシア/SanDisk の 162 層世代です。額面どおりなら、格安 SSD にありがちな無名 NAND や QLC ではない、という好材料になります。

ただし、少し割り引いて見る必要があります。「Warranty Void If Label Removed」の警告を承知でラベルを剥がすと、NAND は 512GB × 2 チップ構成で、刻印は NC86TAA1442512G。SanDisk やキオクシアの純正品に使われる刻印体系ではありません。ツールは NAND が返す ID バイト(0x45, 0x48, 0xA8…)を手元の対応表と突き合わせて「SanDisk 162L BiCS6」と表示しているだけなので、純正パッケージでない以上、この識別は参考程度に見ておくのが無難です。第三者が封止した NAND では、ID が SanDisk 由来でも選別グレードは分かりませんし、対応表にない別世代のダイを近い ID の製品として誤判定することもあります。
「ツール上は BiCS6 と出るが、確定ではない」という状態で、格安 SSD ではよくあることです。それでも TLC であること自体は、後述する全域書き込みで速度が QLC のように落ち切らなかったことから、まず間違いないと見ています。なお、後述のとおりコントローラは江波龍(Longsys)系のカスタム品で、同社設計の Lexar THOR が「Longsys 封止の NAND」を載せている前例があるため、この NAND も Longsys 側で封止した可能性はあります。刻印からは特定できませんでした。
コントローラはツール上「Unknown」でしたが、ラベルの下には MESTOR のロゴと MS1015 の刻印がありました(デートコード 2407 = 2024 年第 7 週)。ファームウェアの識別文字列 MS1015 とプロジェクト名 mestor_1602 に一致します。横には JSCC の 25.000MHz 水晶振動子が載っています。
MESTOR(迈仕渡電子)は、Lexar ブランドを擁する江波龍(Longsys)の完全子会社で、OEM/ODM 向けのカスタム製品を担当しています。同じ MESTOR 刻印のコントローラでは、別型番の MS1006 が Lexar THOR 1TB の実機レビューに「迈仕渡 MS1006 定制主控(カスタムコントローラ)」として登場しています。MS1015 も、江波龍グループがカスタム品として調達し、自社刻印を入れたコントローラと見るのが自然です。
では中のシリコンは何か。PCI のベンダー ID が 1E4B(Maxio = 聯芸科技)、デバイス ID が 1015、基板が Maxio の MAP1602 リファレンス設計、ファームウェアのプロジェクト名が Maxio の 1602 系、と材料が揃っているので、Maxio 製シリコンの OEM 向け刻印である可能性が高いと考えています。ただし MS1015 と Maxio の型番を対応付ける資料は見つからず、通常の MAP1602(デバイス ID 1602)とは ID も異なります。MAP1602 と同一チップとまでは言い切れません。フラッシュ ID ツールがコントローラ名を出せなかったのも、この ID の違いが原因です。

| 確認できた値 | 備考 | |
|---|---|---|
| NAND | SanDisk 162L BiCS6 TLC 1024Gb/die 4Plane(ツール識別、512GB × 2 チップ) | 刻印 NC86TAA1442512G は第三者パッケージで、識別は参考値/NAND string:SDUNFIAMAxx |
| コントローラ | Mestor MS1015(江波龍系のカスタム品。PCI ベンダーID 1E4B = Maxio、デバイスID 1015) | 刻印 MESTOR MS1015・2407/基板 MAP1602-DB-10-01/FW プロジェクト mestor_1602。MAP1602 と同一かは未確認 |
| DRAM | 非搭載(HMB 40MB) | ホストメモリを 40MB 借りる DRAMレス構成 |
| ファームウェア | V1.0.7 | ビルド日は 2024年12月27日 |
| インターフェース | PCIe 4.0 x4/NVMe 1.4 | リンクは 16.0 GT/s x4 で確立 |
| 容量 | 1024.2 GB(976,762 MB) | LBA 512 バイト。Windows 上では 953 GB |
| 対応機能 | S.M.A.R.T./TRIM/VolatileWriteCache | CrystalDiskInfo の表示 |
フラッシュID・ファームウェア文字列は maxio_nvme_fid、チップの刻印は保証ラベルを剥がして目視、その他は CrystalDiskInfo と HWiNFO から。いずれも筆者の個体の値
届いた状態:フォーマット済みで、少し使われた形跡あり

PC に挿すと、初期化する前から 「新加巻 (I:)」 というドライブが現れました。「新加卷」は中国語版 Windows がフォーマット時に付ける既定のボリューム名です。つまり出荷前に誰かが中国語版 Windows でフォーマットした状態で届いています。新品の SSD は未初期化で届くのが普通なので、少し驚きました。

S.M.A.R.T. を見ると、受け取った時点で電源投入 11 回、使用時間 1 時間、総書込 409GB・総読込 395GBでした。容量の 4 割ほどを書いて読み返した形跡があり、出荷前の検査で書き込みテストをしたものと思われます。健康状態も予備領域も 100% のままなので実害はありませんが、「まっさらの未使用品ではない」ことは頭に入れておくとよさそうです。ちなみにシリアル番号は 318B11111111111120E と「1」の羅列で、個体識別には使えなさそうです。
容量偽装チェック:H2testw で全領域を書き込み

格安 SSD でまず確かめたいのは、「1TB と称して実際は 128GB」といった容量偽装がないかどうかです。H2testw で空き領域の全て(976,611 MByte)に書き込み、読み返して照合した結果はエラーなし。容量偽装はありませんでした。
全域書き込み時の平均速度は 601MB/s でした。H2testw はシングルスレッドで、SLC キャッシュを使い切った後の素の書き込み速度がそのまま平均に反映されるため、カタログ値より大きく下がるのは DRAM レス TLC として想定内です。逆に言えば、QLC なら 100〜200MB/s 台まで落ち込むところが 600MB/s で踏みとどまっているので、TLC という表記はこの結果からも裏付けられます。1TB を一気に書き込む用途でなければ、この数字が体感に出ることはほぼありません。
ベンチマーク:CrystalDiskMark

| Read(MB/s) | Write(MB/s) | |
|---|---|---|
| SEQ1M Q8T1 | 6,411.50 | 5,610.67 |
| SEQ128K Q32T1 | 5,224.16 | 4,886.32 |
| RND4K Q32T16 | 2,083.00 | 1,695.74 |
| RND4K Q1T1 | 55.44 | 104.92 |
テストサイズ 64MiB・1 回。小さいサイズなので SLC キャッシュ内の瞬間値で、持続書き込みの実力は「04」の 601MB/s の方が近い
シーケンシャル読み出しは 6,400MB/s 台で、PCIe 4.0 x4 の実効上限に近い数字です。販売ページの「7000MB/s」には届きませんが、この価格帯の DRAM レス機としては標準的な結果です。ランダム 4K の Q1T1 読み出しが 55MB/s と控えめなのは、DRAM を持たず HMB 40MB でマッピングを賄う構成の宿命で、体感差は OS やアプリの起動でわずかに出る程度です。
測定環境
| CPU | Intel Core i7-12700(Alder Lake-S) |
| SSD の接続先 | Lekuo PB65MX3(AMD B650 チップセット搭載の拡張ボード)の M.2 スロット。チップセット経由で PCIe 4.0 x4・16.0 GT/s のリンクを確立 |
| 比較用 SSD | HIKSEMI FUTURE 2TB(Maxio MAP1602、デバイスID 1602)。同じ拡張ボードの別 M.2 スロットに搭載 |
| OS/ドライバ | Windows 11/Microsoft 標準 NVMe ドライバ |
| ツール | CrystalDiskInfo/CrystalDiskMark/H2testw/maxio_nvme_fid/HWiNFO |
| 条件 | CrystalDiskMark は 64MiB・1 回、空の状態で計測。H2testw は空き領域全体に書き込み |
CPU 直結ではなくチップセット経由の M.2 スロットで計測している点に注意。拡張ボードの詳細は第6回のレビューを参照
ASPM 非対応:省電力ステートに入らない

ここは今回いちばん気になった点です。HWiNFO で PCI Express の機能一覧を見ると、ASPM(Active State Power Management)のサポートが「なし」になっています。ASPM はアイドル時に PCIe リンクを低電力状態(L0s/L1)へ落とす仕組みで、これがないと SSD は常にフルパワーのリンクで待機し続けます。


| GOFATOO(Mestor MS1015・デバイスID 1015) | HIKSEMI FUTURE 2TB(MAP1602・デバイスID 1602) | |
|---|---|---|
| ASPM サポート | なし | L1 |
| ASPM ステータス | 無効 | L1 Entry |
| L1 Exit Latency | 32〜64 µs | 32〜64 µs |
| リンク | PCIe 4.0 x4・16.0 GT/s | PCIe 4.0 x4・16.0 GT/s |
| Max Payload | 512 bytes 対応/256 bytes 使用 | 512 bytes 対応/256 bytes 使用 |
同じ Lekuo PB65MX3 拡張ボードの M.2 スロットに挿した 2 台の比較。HIKSEMI FUTURE 2TB は筆者所有の通常の MAP1602 搭載 SSD
同じ拡張ボードに挿してある HIKSEMI FUTURE 2TB(通常の MAP1602)は L1 に対応し、実際に L1 に入っています。したがってマザーボード側の設定ではなく、この個体(Mestor MS1015 かそのファームウェア)が ASPM を提供していないと判断できます。
影響が出るとすればノート PC やミニ PCです。アイドル時の消費電力が下がらない分、バッテリー持ちに響いたり、Modern Standby(S0ix)でスリープが深く入らなかったりする可能性があります。実際、CrystalDiskInfo のアイドル温度は 53℃ で、同じ PC の他の 7 台(34〜44℃)より明らかに高めでした。常時給電のデスクトップなら実害はほぼありませんが、ノート PC の換装用には向かないかもしれない、というのが正直なところです。
確認結果まとめ
| 実測・確認できたこと | 販売ページの表記 | |
|---|---|---|
| 容量 | 1024.2GB、全域書き込みでエラーなし | 1TB |
| NAND | SanDisk 162L BiCS6 TLC(ツール識別。第三者パッケージのため参考値)。挙動は TLC | TLC(メーカー記載なし) |
| コントローラ | Mestor MS1015(江波龍系カスタム品、Maxio 製シリコンの可能性大)・DRAMレス(HMB 40MB) | 記載なし |
| シーケンシャル読込 | 6,411MB/s(64MiB) | 7000MB/s |
| 持続書き込み | 601MB/s(全域平均) | 記載なし |
| ASPM | 非対応 | 記載なし |
| 届いた状態 | フォーマット済み、電源投入 11 回・書込 409GB | 新品 |
| シリアル番号 | 「1」の羅列で個体識別には使えず | — |
2026年9月時点。販売ページの表記は GOFATOO Official Store の商品ページから
使った感想
- NAND はツール上 SanDisk BiCS6 TLC と識別され、全域書き込みの挙動も TLC。QLC ではない
- 容量偽装なし。全域の書き込み・検証をエラーなしで完走
- シーケンシャル 6,400MB/s 台で PCIe 4.0 機として普通に速い
- Maxio のリファレンス基板そのままで、素性の分からない独自設計ではない
- ASPM 非対応。ノート PC・ミニ PC では電力と発熱の面が気になる
- フォーマット済み・書込 409GB の状態で届いた。まっさらの未使用品ではなさそう
- コントローラは Mestor MS1015 というカスタム刻印品で、正体は状況証拠から推測するしかない。NAND も純正パッケージではなく、素性は追いきれない
- シリアル番号が「1」の羅列で、保証時の個体特定には使えなさそう
デスクトップのデータ用ドライブとして使う分には、速度も容量も期待どおりで不満はありません。アイドル温度が他のドライブより 10℃ ほど高いのは ASPM 非対応の影響と思われますが、ヒートシンク付きのスロットなら気にならない範囲です。
総評
「中身が分からない格安 SSD」としては当たりの部類です。NAND はツール識別で SanDisk BiCS6 TLC(第三者パッケージのため確証はなし)、コントローラは江波龍系カスタム品の Mestor MS1015(Maxio 製シリコンの可能性大)、そして容量偽装なしという結果でした。MINISFORUM のミニ PC に採用されているのも、江波龍グループの OEM 供給網に乗った製品だと考えると腑に落ちます。
デスクトップ PC の増設用や、ゲーム・データ置き場として割り切って使うなら価格に見合います。一方で ASPM 非対応は少し気になる点で、ノート PC の換装やバッテリー駆動のミニ PC には向かないかもしれません。届いた状態がフォーマット済み・使用痕ありだった点も含めて、「安い理由を分かった上で買う」商品だと思います。
GOFATOO M.2 NVMe SSD 1TB を AliExpress で見る
リンク先は GOFATOO Official Store。価格・クーポンは 特価記事 も参照
GOFATOO Official Store(AliExpress)で見る・中国日報:CFMS2024 江波龙/CFM闪存市场:迈仕渡电子(MESTOR が江波龍の完全子会社で OEM/ODM 事業を担う件)
・PConline:雷克沙 THOR 1TB 試玩(MESTOR MS1006 定制主控と Longsys 封止 NAND の実例)
・Maxio:MAP1602 製品情報(リファレンス設計の元になったコントローラ)
使用したツール
・CrystalDiskInfo/CrystalDiskMark(S.M.A.R.T.・ベンチマーク)
・H2testw(容量偽装チェック)
・maxio_nvme_fid(Maxio 系コントローラ向けフラッシュIDツール。NAND の識別)
・HWiNFO(PCI Express の機能・ASPM の対応状況)

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